「日々のごはん」は私たちにとって日常ですが、その基盤となる「農業」は多くの方にとって非日常の営みです。「育てる」「つくる」を、もっと身近に。
ライフラインが止まり、スーパーの棚から食品が消えたとき、パンデミックで海外からの食料輸出の制限がかかったとき、日常の食への危機感は一気に募りました。わたしたちの食は、海外からの輸入に頼らざるを得ないのが現状です。農産物の大元となる野菜の種苗の約80%は海外でつくられています。
神山町では未就学児から高校生までを対象とした「地域ぐるみの循環型食農教育」を実施しています。種から育てて、調理して食べる。その種を次に受け継いでいく。循環型の農体験を、地域の農家さんや作り手、学校と協力しながら一緒に取り組んでいます。
子どもたちは農体験を通して、ものごとの成り立ちを知り、まちの風景をつくる農の営みへの眼差しを育み、不確実な時代をたくましく生きてゆく力を身につけます。
お預かりした寄附金は、これからを生きる子どもたちへ農体験を提供するために使わせていただきます。
育てる、つくる、食べる、つなぐ
体験を通して〝意識〟できる範囲が広がると、なんとも思わなかった〝日々のごはん〟や〝通学路の風景〟が違って見えることがあります。食べ物を育てる経験や、資源の循環に触れる機会が少なくなっている現在だからこそ、農体験を日常化し、「食」を通して世界の見え方を獲得する楽しさを、多くの人と共有したいと願っています。
種をまこう、種をつなごう
一緒に種をとり、種をまき、育て、料理して食べる。そして種をつないでいく。季節や世代をこえて、食べる循環を学んでいきます。
神領小学校と広野小学校では、地域で75年以上継がれているもち米の種を校内でつないでいます。城西高校神山校では、同じく75年以上継がれてきた小麦の種を譲り受け、休耕地になっていた場所で栽培・収穫・加工品の開発に取り組んでいます。翌年からは、40年以上継がれてきた蕎麦の種も譲り受け、栽培が始まりました。地域から高校へ、先輩から後輩へ、食文化をつないでいます。
手を動かそう、実践してみよう
百聞は一見にしかず。習うより慣れる。手を使って、考え、話し合い、実践していきます。
小学校2年生では、籾殻や糠を使った肥料を手で混ぜ、土作りをしました。「バナナマフィンの匂いがする~」とクンクン。小学校3年生の国語の教科書には「すがたをかえる大豆」という説明文があります。教科書の内容を実際に体験しようと、大豆の栽培、収穫、きな粉づくり、豆腐づくりに取り組みました。できたての豆腐の甘さやおからの量、鞘から豆を取り出す大変さなど、五感をフルに使う体験を通して説明文への理解が深まっています。
つくり手から学ぼう、地域とかかわろう
地域の農家さんや食にまつわる生産者から一緒に手を動かして学んでいます。地元に根ざし活動する人たちから学ぶことで地域にも関わっていきます。
小学校3年生では授業「町たんけん」で訪れた農家さんから分けていただいた大豆を育て、豆腐職人から豆腐づくりを教わり、みんなで作って食べました。高校ではお弁当づくりの際に管理栄養士や料理人がアドバイスに入ったり、神山小麦の栽培を通してパン職人やビール醸造場の方にお話を伺ったり、収穫したものを道の駅で販売したり。まちの中で多様な人と触れ合う経験を重ねています。
日常にとりこもう、自分のものにしよう
毎日、あいさつする。毎日、料理する。毎日、食べる。大切なのは日常。学んだことを日常に落とし込むことで、自分の身体に取り込んでいきます。
高校のプロジェクト型の学習では、それまでの体験から得たスキルや知識を足場に、商品開発や制作に取り組んでいます。お弁当プロジェクトに取り組んだ2年生がブラッシュアップしたお弁当づくりにチャレンジしたり、パッケージづくりにこだわった「地産100%のお弁当」を作ったり。経験が次の展開につながっています。
農体験をふりかえって
「田植えは乗り気じゃなくて、田んぼに入るのも、はじめはすごく抵抗がありました。足を取られて動けなるし、服も汚れるし。でも途中から『汚れたらもうええか』と開き直りました。思いっきりダイブしたいと思うくらいになりました」
「自分が体験する前は、田植えをしている様子を見ても『やいよんな(やってるな)』くらいでしたが、今は『あ、大変やな』と思います。見方が変わって、今まで注目してなかったものに注目するようになったと思います」(取材当時中学3年生)
農体験を届ける活動に
ご支援をお願いします
神山町の食農教育は、保育所・学校と、地域の会社フードハブ・プロジェクトとで連携して実施しています。
皆様からお預かりした寄付は、まちの子どもの農体験や、それを支えるコーディネーター育成、多分野の研究者との研究開発等、食農教育に関する取り組みに活用いたします。
食農教育に関わる大人より
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神山町役場・総務課
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