「神山での子育て」当事者インタビュー
神山町で子育で教育に関わる人たちにインタビュー
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神山で子育て・保育・教育に関わる人に、インタビューするシリーズです。
実際にどのような思いでここに住み、子どもに関わっているか、リアルな声を聞いてみましょう。
第1回目は、町内で小さなお子さんを育てている二人のお母さんです。お二人とも町内出身で、いったんは県外に住んでいたものの、子育てをきっかけにUターンしたという共通点があります。
ひとりは、「まちのリビング 鮎喰川コモン」スタッフの太尾めぐみさん。もうひとりは、鮎喰川コモンで乳児向けの居場所「すくすく子育て」の常連さん、原千尋さんです。
神山に戻ってこられた経緯を教えてください。
太尾:鬼龍野出身で、保育所に三人の子どもが通っています。ずっと神山町に住んでいたのですが、結婚を機に高松の方に出ました。でも、子どもたちが年子・双子で手が足りなくて、実家を頼って帰ってきました。神山に戻ってきたかったので、良かったと思っています。
原:広野出身で、県外の専門学校へ通いましたが、大学に入り直すのに実家に戻って受験。大学在学中は町外へ出ましたが、結婚後は夫と石井町に住み始めました。でも、「子育ては、神山でしたい」と思っていたので、神山町内に引っ越したんです。
なぜ、神山で子育てしたかったんですか。
原:わたしは、子どもの頃から自然がいっぱいある中で暮らしていました。それが原風景なんです。人数の多いところで暮らすのは苦手なんですね。町内で過ごしていた時期は、学校も楽しくて、自然の中をかけめぐっていました。神山に戻ってきて、とても安心感があります。
太尾:一番は、自分の家族がすごく好きで、離れる理由がないというところでしょうか。それから、神山では、当たり前のように近所のおじちゃん・おばちゃんたちが、挨拶してくれますよね。でも、高松の街中で暮らしていた時、隣に誰が住んでいるか分からない状態で、ベビーカーで散歩しても、すれ違う人同士で挨拶しない。可愛い赤ちゃんと暮らしているのに、心がだんだん悲しくなっていくんです。孤独感がありました。
祖父母が身近にいるありがたみも感じていたし、神山の自然も好きだったから、双子を妊娠したとわかって思い切って帰ってきたんです。今、子どもたちは、祖父母のおかげで自然と土に触れさせてもらっています。
こういった経験を通して色々なことを吸収してくれていると思います。
まちのリビング「鮎喰川コモン」は、まち出身者も移住してきた人も、赤ちゃんからお年寄りまで年齢にかかわらず、互いの価値観や経験を分かち合って過ごせる場所です。お二人が、コモンを利用する前と、スタッフや常連になった後の変化で、何か変化はありましたか。
原:新生児の時は、出歩けなくて、不安ばっかりだったんです。でも、「コモンに来たら安心だと感じるようになりました。居場所が増えたような感覚です。小学生の子達も「赤ちゃんやー!」と可愛がって一緒に遊んでくれています。抱っこもうまいんですよ。
太尾:わたし、実は今まで、子育て支援の場って行ったことがなくて。お出かけ準備も大変で大荷物になるし、グループがもうすでに出来上がっているんじゃないかと苦手意識があったんです。こっちに戻ってきてからコモンで働くようになって、たくさんのお子さん、お母さんと出会って、世界が広がりました。ここでは、スタッフ同士も、スタッフと利用者さんとの間でも、悩みや思いを受け止め、共感し合えるんです。涙しあう場面もありました。ここで働いていなかったら、そういう仲間と全く出会っていなかったなぁとありがたみを感じます。
鮎喰川コモンと同じく、「地域子育て支援拠点」のぱんだぐみ(広野保育所内)はどうでしょう。
太尾:コモンで働き始めて知り合ったお母さんたちは、ぱんだぐみにも、コモンにも両方、来ていますね。
原:わたしも、コモンもぱんだぐみも、どっちも来てました。ちょっとずつ空気感が違う印象ですが、わたしはどっちも居心地が良かったんです。コモンは多世代でいっぱい。一方、ぱんだぐみは、保育所に入ってない乳幼児とスタッフの人。園庭にも出させてもらって保育所の子どもたちと一緒に遊ぶこともあって、保育所の中にいる、という感じですね。
町の保健師さんはどうでしょう。
太尾:神山に戻ってきて、保健師さんとの関係性の距離が近いと感じました。地元の世間話を入れながら、色々と話せるから距離が近くなる。「保健師さん」と「お母さん」という関係性だけではない関係があるように思います。
原:そうそう、すごく丁寧でありがたいです。歯科検診、股関節脱臼の検診、予防接種のスケジュール表なんかを、うちの子のためにオーダーメイドで表に作ってくれて。
産後ケア事業が3回無料なんですよね。助産師さんを家に派遣してくれる事業があって、町(保健福祉課)に電話したら、すぐ日程調整してくれました。すごくありがたかった。おまけに、社協が子どもが、2歳になるまでオムツを支給してくれるし、チャイルドシートも借りられる。
太尾:補助が手厚いのは、すごくありがたいですね。
原:うん。それは、まちがいない。
神山での子育てを総じてどう感じていらっしゃいますか。
原:環境がいいです。自然を感じられるし、周りの子どもたちは素直。ご近所さんも優しい。都会じゃできないことができる。都会では、土の上で歩いたり、走ったりはなかなかできない。子どもが自然のものを直に触るって、感性が磨かれるから大事なこと。神山は、子どもたちが、生きてるだけ色々なことを吸収できる環境にありますね。
太尾:うん。自分の子がどこまでできるか。虫をどこまで触れるか。それをみられるのが楽しい。子どもの性格も見えて面白い。
原:ここにきている小学生たちみてもすごく楽しそうだもんね。木に登ったり、虫を捕まえたり。川に行ったり。わたしも子どもの頃、川や山を駆け巡って、楽しかったなぁって思い出す。
こうだといいな、というのは。小学校に上がった時に心配なことはありますか。
原:わたしの同級生の一部は、「少人数だから、世間知らずになりやすいんかな」ということを言っていたけれど、そんなことはない。タブレットでオンラインで繋がれるし、しかも、神山には今、移住してきた人たちも含めて色々な人が住んでいる。世間知らずになるということはないと思っています。
太尾:周りの人からは「小学校、アットホームでいいよ」と聞いている。だから、特に心配はないかなぁ。小学校の運動会って、みんなで多世代でやるんだよね。今年も、広野地区の運動会に参加したんです。広野小学校を卒業した中学生もいました。最後に、阿波踊りを総踊りでやった時、中学生も踊りの輪に入っていました。わたしが中学生の時って、堂々とやることが恥ずかしい時期もあった。でも、今の神山中学校の子たちは「一生懸命=かっこいい」を知っているように見えた。羨ましくもありました。
原:小学校の運動会なのに中学生も、地域のお年寄りもみんな参加するんだよね。そういうの、わたし、心がぽかぽかするなぁ。地域全体で子育てしている感じがいいよね。
神山の人と自然が好きだから、神山に帰ってきた2人。地域の中で、子どもたちが年齢を超えて共に育ちあう様子に魅力を感じておられました。また、それを取り巻くおとなや行政の支え・見守りに安心を感じている様子です。
次回は、河野雅俊町長、高橋博義教育長のインタビューです。どんな思いで、保育・教育行政が行われているのかが見えてきます。
神山町で子育で教育に関わる人たちにインタビュー
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