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TOP > まち全体で子どもを育んでいく神山 > 子育て当事者インタビュー > 広野小学校(児童約30人)の5人の先生から聞いた小規模校の学びと暮らし

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町内2小学校のうち、
より小規模な広野小の先生にお話を伺いました。
学びと暮らしがつながった様子が伝わります。

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今回は、まちの2つの小学校のうち、広野小学校の先生方へのインタビューです。

広野小は、児童数31人に対して先生方は14人(令和5年度)。家庭的な雰囲気の中で、学びと暮らしが接続した教育環境が、広野小の特徴のようです。

大豆、トマトにキュウリ、白茄子など、教科書の学びの他にも、みんなが植えたい・食べたい野菜を育て、毎日のようにお世話しているのも、広野小ならではです。畑はもはや小さな農家さんレベル。

少人数だからこそ一人一人にスポットライトが当たる学び、体験ができる広野小。大和利弥校長、海老名三智子教頭、木村祥子先生、久保貴嗣先生、寺奥久滋先生にお話を伺いました。

国の基準で複式学級になるクラスでも、単式学級になるように、神山町が独自に教員を任用。子どもの学びを保障するために神山町が県でいち早く始めた制度です。詳しくは、町長・教育長のインタビューをご覧ください。


大和:僕は阿南市出身です。阿南第一中学校、第二中学校や、韓国・釜山の日本人学校、伊島小学校などで教えてきました。広野小には2023年4月に着任しました。

海老名:私は徳島市内の学校へ勤めた後、鬼龍野小学校、神領小学校のほか、那賀町の小学校へも行きました。教頭で戻ってきて広野小は1年目になります。

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左から海老名教頭、大和校長

久保:広野小が初任地です。2校目は東みよし町の加茂小学校。それからまた広野小へ戻ってきました。

木村:初任地は、石井町の高川原小学校ですが、その前に臨時で3学期だけ広野小にきたことがあります。石井町内の小学校で主に17年勤めた後に、広野小に来ました。

寺奥:石井小学校など大きめの小学校を3つ経験した後、広野小へ来ました。今年で3年目。僕は神山出身なので、帰って来られて嬉しいです。

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手前が寺奥先生。奥は神山つなぐ公社のひとづくり担当、秋山千草さん。秋山さんは広野小学校では川遊びなど含めたくさん関わりがあります。この日は先生たちの話を黒板に記録係に徹しつつ「広野小、素敵だなぁ!」と感動していました。

初めて広野小に赴任された時の印象はいかがでしたか?

寺奥:畑を見て「広い!」と思いました。ヘチマとヒョウタンを植えても、まだありあまる敷地です。僕がこれまで勤務していた学校は、校内にも校区にも畑は少なかったんです。僕にも畑の経験はない。でも今は朝、職員室へ行く前に畑を確認するほどになりました。畑で収穫したての野菜を毎日のように食べています。子どもも僕も「あ、トマトできとる(パクッと口に入れる仕草)」といった感じで気軽に食べています。

久保:広野小は、育てるだけでなくて、食べるのも頻繁ですからね(笑)。

木村:そうそう。「料理したのを食べてください」とか「たくさん収穫できたので、おすそ分け」といった形でみんなで食べますよね。広野小には、学年ごとに育てている野菜を他の学年にお裾分けする文化があるんです。

寺奥:教師が「他の学年にも分けよう」って提案するんじゃないんです。子どもたちが届けたくて届けているんですよね。

海老名:広野は、学年の交流、縦のつながりが深いから。児童数が2人の学年もあるので、他の学年も巻き込んで、みんなで楽しんでいることが多いですね。

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左から木村先生、久保先生

小さな学校ならではですね。「料理したものをお裾分け」とおっしゃっていましたが、調理実習の日でなくても調理するんですか。

久保:野菜をたくさん収穫できたら、「何か作ろうか」となるんですよね。毎回、給食に追加でキュウリの料理が一皿あるような感じです。収穫後、教室に帰って、次の算数の授業が終わったら、そのトマトを食べることもあります(笑)。

大和:日常的に収穫の喜びが味わえるのは、広野小ならでは。今年は、キュウリ、たくさん食べたなぁ。

木村:みそや、マヨネーズをつけたのも食べましたね(笑)。

食と農が学校生活の中に自然と入っているんですね。驚きました。

大和:子どもの学びが深まっているのをよく感じますね。総合的な学習の時間は1・2年生は大豆を育てるんですが、収穫から味噌作りまでやっています。4年生は梅干し作りです。

久保:少人数だからできるということは多いですね。

学級園で作っているピーマンで野菜炒めを作っている様子
学級園で作っているピーマンで野菜炒めを作っている様子

1年生がたくさん収穫したピーマン。5年生が刻んで炒め、クラッカーのせてみんなで食べた日。広野小HPより

農と食の他に、少人数のメリットはどんな時に感じますか。

寺奥:プールの指導がすごいな、と思いますね。4年生以上は夏の水泳大会前の放課後、泳ぐ練習をするんです。街中の中規模校だったら、希望者のみの参加で20〜30人を2人ぐらいの教員で指導するんです。ところが広野は対象学年の14人全員が参加します。一方、水の中に入って指導する先生は5人。校長先生も来てくださる。

大和:先生たちは、子どもの習熟度に合わせていて、無理をさせる指導はしていない。子どもに応じた指導だからこそ、自然に伸びていったのかなと思いますね。

海老名:小学校を卒業するまでに「クラス全員が泳げる」、しかも「全員が1分以内に50メートルを泳ぎきることができる」というのは、広野小の成せる技かなと思います。

木村:25メートルがようやく泳げるといった子や、プール脇で震えているような子が、泳げるようになるんです。

子ども2〜3人に教員1人が対応できる水泳指導。手厚いですね。広野小は、目の前に川もありますが、川での学習も活発だと伺いました。

久保:昔から水生生物を採集して、水質調査をしてきました。子どもたちは、川の虫を採集した後で、川遊びするのが楽しいようですね。今年は川遊びがメインでしたが、とても楽しかったようです。

川で魚を捕子どもや、ライフジャケットで浮かんだまま川を流れてみる子どもたち
水生生物を観察した後、川遊び。右側の竹は、前日に先生と保護者が作った川のベンチ。(参考記事

木村:川ということで言えば、5年生の理科では、川の流れについて学ぶ単元があるんですが、実物が身近にあるので学びが早いです。川の曲がり角の内側は砂利が多く、外側には岩があるということを学ぶ時は、学校の前の川の実物を見て「あそこのことね」と言える。子どもたちは「オッケー、分かった」となる(笑)。

単なる暗記ではない学びがあるって豊かな環境ですね。一方で、少人数ならではの課題についてはどうでしょうか。

寺奥:私の担任しているのは2人なんですが、1人が休んだら、授業を進めることはできません。1日授業を進めたら相方は置いていかれるので、翌日に遅れた分だけ同じことをする必要があります。だから、授業の進め方を考える必要があります。例えば先日も1人が欠席したので、出席しているもう1人と「国語は何する?」「算数は?」と話しながら、学ぶ内容を決めていきました。その子が算数では教科書のコラム的な欄に掲載されていた「メビウスの輪」を指して、「これをやってみたい」という。それで実際に作ってみたんです。この時は、自由研究レベルの調べ物になりました(笑)。

どんなことになったんですか。

寺奥:普通のメビウスの輪は、半捻りですよね。細長い紙の帯を半捻りして繋げたものを「1メビウス」と名付けて、2メビウス、3メビウス…と作り、帯のラインを真ん中で切り分けていきました。子どもが輪を切って考えて、わたしは記録係。いっぱい切った輪を黒板に貼り付けていくと、偶数と奇数で切った後の輪の形に違いと法則を見つけたんです。「こんな法則あるんや!」と驚きました

大和:人数が少ないから、子どもに試行錯誤させる場面を作りやすいかもしれないですね。知識重視で進めてしまいがちなところも、ちょっと考えを深めさせることができます。

大谷翔平選手から届いたグローブと子どもたち
広野小にも大谷翔平選手からグローブが届き、みんなおおはしゃぎです。全国どこの小学校にも3つずつ。広野小では少人数ゆえ、毎日のように使えるので一気に校内に野球熱が広がったとのこと。記事はこちら

校外学習に出かけることも多いと思いますが、受け入れてもらいやすいのではないでしょうか。

久保:そうです。「いつでもいいですよ」と言われますね(笑)。

海老名:スクールバスを使って町内もあちこちに出掛けられますからね。

寺奥:久保先生が始めた4年生の梅干し作りは、教頭先生が紹介してくださった地域の梅農家さんにお邪魔しています。今年は4年生2人と、私と教頭先生の4人(笑)。収穫後は、梅干しを製造している保護者さんに教えてもらって梅干しにしました。

校区内の農家さんのご厚意で梅を収穫する子どもたち
校区内の農家さんのご厚意で、4年生の2人が梅収穫。子どもでも収穫しやすいよう、低い位置にある枝の実をたくさん残してくださっていたとのこと。広野小HPより

久保:一方で、少人数だから子どもから出てくるアイディアの数が限られてしまうというのはありますね。子どもも、反対意見や指摘がほぼでてこないこともありますね。でも、全員が手を挙げるという雰囲気もある。勝手に子どもらが、そういう雰囲気を作っている(笑)。

寺奥:もちろん発表が好きな子と嫌いな子がいるけれど、「人数が少ないから仕方ないな」という感じで頑張っていますよね。高学年は手を挙げる子が少なくなる時期ですが、子どもの中に、「発表しないといけない」という気持ちがあるみたいですね。

海老名:高学年は行事でも、よく自分から動いて働きますよね。小さい学年の時から一人一人にスポットライトが当たるからなのか、みんな一生懸命。

木村:子どもたちにお仕事を何か頼んだら、すごい嬉しがってくれるんです。休み時間が潰れることに抵抗がない。いやな気持ちでする子がいないんですよね。

久保:そうそう。行事ごとなどで会場のセッティングを先生数人でやっているような時も、自然と子どもたちが手伝いにくるんですよね。

寺奥:とにかく体を動かして手伝うのが好きな子もいました。お手伝いがすきなのが高じて、運動場をとんぼでならして、白線ラインを毎日なぞっていたんです。新卒1年目の教員よりも、ラインをひくのが上手でした(笑)。

海老名:上の学年の子が、下の子のお世話に来るのも自然ですよね。保護者の方も、すごく協力的ですね。コロナの影響でPTAの奉仕作業を無くした時も、保護者が自発的に呼びかけあって草刈りをしてくださったり。「困ったことがあったら、なんでもいうてよ」って。

寺奥:学校全体が家族の延長のような感覚かもしれません。

大和:職員室でも、今日はあの子はこうだった、ああだったと、先生方みんなで子どもの話を共有することが多いですね。1人の児童の成長を、みんなが知っている。担任している、していないに関わらず、「全員で子どもを育てる」という共通理解が職員室にあります。

黒板に先生方のお話を記録した様子
先生方のお話を記録した図

「家庭的」というよく使われる言葉に収めるのが勿体無いほど、先生方の子どもたちへの想いが言葉に溢れるインタビューとなりました。

次は、町内で子育てをする先輩お父さん、お母さんたちの座談会。リアルな神山での子育てが見えてきます。

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