子育て当事者インタビュー

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子どもたちが、
きょうだいのように育つ少人数の町内2保育所。両保育所の3人にお話を伺いました。

町内の保育所は2つあります。広野保育所は山際に建ち、下分保育所は川沿いに建っています。季節の変化を楽しみやすい環境にある2施設ですが、どんな保育の特徴があるのでしょう?町職員である保育士の先生たちは2園で勤務・異動を繰り返します。先生たちに両方の特徴について語ってもらいました。
広野保育所の樽尾圭子所長、保育士の清水麻衣子さん、下分保育所からは阿部香織さんです。


みなさんの背景を教えていただけますか。

樽尾:元々、神山町役場で8年ほど事務をやっていたのですが、保育士資格も持っていたので、育休明けに保育所勤務になりました。それから20年がたちます。子どもが小さかった時は、広野保育所に預けて、私もそこで働いていました。子どもの様子を見ながら働けたのでよかったですね。

清水:町内在住で、広野保育所に勤めて8年目になります。下分保育所に子どもを通わせている保護者でもあります。

阿部:神山町では、広野保育所で3年。下分保育所で2年半になります。1時間かけて町外から通勤していますが、職員同士の人間関係が良いので、通勤時間が長いのは苦になりません。

ご近所にも保育所はたくさんありそうなのに、1時間かけても働きたい保育所が神山の保育所なんですね。神山の保育所に特徴はありますか。

清水:神山の風土は、同じ年齢だけでなくて、異年齢のつながりも強いなと感じますね。幼児期から兄弟みたいに、みんな一緒に育っているように思います。例えばお昼寝の時に、大きい子が小さい子のところへ行ってトントン、寝かしつけをすることでも、そういう空気を感じます。神山の保育所は少人数なので、異年齢での関わりの機会も多くなりますね。

樽尾:国の基準では「3歳児で保育士1人が見られるのは児童20人」ですが、異年齢の関わりも、少人数だからこそ実現しやすいことですね。

阿部:私は、以前は町外の保育所で働いていたんですが、神山の保育所はゆったりとした雰囲気の中で、子どもたちと接することができるように思います。一人一人と向き合う時間をじっくり作ってあげられるのかな、と。でも、保育士不足の問題もあり、身体的に大変な面もありますが、少人数の保育の良さを感じています。

photo:Masataka Namazu
photo:Masataka Namazu

とてもいい環境なんですね。保護者さんはどうですか。

樽尾:保護者さんの特徴で言えば、令和5年度、下分保育所の60%は移住された方になっています。広野は割と少ないですね。広野保育所は徳島市に近くて立地が便利ですから、広域利用で町外から来ている人もいますね。

阿部:移住された方は「自然の中でのびのびと遊んでほしい」という思いの方が多いようです。ただ、保育所も保育士不足の状況で、子どもたちにとって安心安全な保育を考えると、戸外での活動範囲が制限されてしまうこともあるので、ご理解いただければありがたいなと思います。

職員間の雰囲気はどうですか?

清水:こういう保育がしたい、というのを伝えた時に、所長はそれを実現するためにすぐに動いてくれますね。簡単なことで言えば、「子どもたちにリトミックの体験をさせてあげたいからしてもいいですか」と提案したら受け入れてもらえる。そのほか保育の準備物のお願いや研修に行きたいといったことなど、要望も意見も言いやすい環境です。職員会議も活発な意見交換の場となっています。

阿部:そう。なんでも相談しやすい。職員室でも明るい雰囲気で、課題があっても職員みんなで話し合って同じ方向に向かっていける。だから、頑張ることができます。

樽尾:保育をするにあたって、人間関係が良好なことはいいことだと思います。研修は大事だと思っているので増やしていきたいですね。

広野保育所、下分保育所、それぞれの保育所に違いってあるんでしょうか。

樽尾:保育の方針は基本的に同じですが、立地の違いによる影響はあります。広野保育所は、小さな子でも歩いて行ける距離に広野小学校があるので、小学校との交流がしやすい環境です。例えば毎年12月には、1-2年生の生活科の授業で作った製作物で、年長児をおもてなししてくれます。「わくわくまつり」というイベントになっています。

<わくわくまつりの様子。1−2年生が色々な手作りゲームで年長児をおもてなししてくれています>
https://www.facebook.com/photo?fbid=1113409792455285&set=pcb.1113429819119949

清水:広野保育所は、国道沿いと言うこともあってお散歩コースが少ないんですが、近くの広野小学校のグランドで遊ばせてもらっていますね。お散歩で小学校の下の川に降りたりします。年長さんは10月ごろにお昼寝の時間がなくなるため、小さいクラスがお昼寝の時間に裏山に登ったり、川に降りたりして遊ぶこともあります。いつも行けるわけではありませんが2歳児クラスでも、河原で石を拾ってみたり、おたまじゃくしやカエルを見たり。秋に行ったらジュズダマ(※)を取りますね。玉を触るのも楽しいようです。

ジュズダマは、川辺などに生えるイネ科植物。秋になる実が硬くて丸いことから昔は、数珠玉として使われていた。

阿部:下分保育所には、お散歩コースは、いろいろありますね。田んぼの畦道、近くの神社、お寺など。

樽尾:2施設共通で、楽しんでいるのは「ネイチャーゲーム」ですね。下分は令和5年度から、広野は5年目でしょうか。徳島県シェアリングネイチャー協会の方が来てくださって、年4回、野の花や葉っぱ、虫など自然と親しむゲームを楽しみます。それから、広野・下分合同で、バスで吉野川の住吉干潟にシオマネキを見にいったりもします。「とくしま自然観察の会」の方が案内してくれるんですよ。

<広野・下分保育所の2施設合同で、シオマネキを見に吉野川へ。河口近くの海の匂いを嗅いで、シオマネキなどの生き物を観察しました>
https://www.facebook.com/photo?fbid=704664858370557&set=a.469075935262785より

バスで行くのは、他にもありますか?

樽尾:広野保育所でスクールバスを使うのは、餅米の田植え、秋の園外保育です。イルローザの森では、ドングリや葉っぱを拾ったり、広い芝生で歩き回ったり。いずれも年に1回ですね。

他には地域の方がやっているいちご畑へいちご狩りにも行きます。いちご狩りは、無農薬のいちごを食べ放題・取り放題で楽しませてもらっています。その農園とのお付き合いは、もう10年以上前、農園の方のお孫さんが広野保育所に通っていたころに、ご厚意で「取りに来て」と始まったんです。お孫さんが卒園後もずっと続いています。

阿部:下分保育所では、田植えは、保育所のすぐご近所の方の田んぼの一角でさせてもらっています。保育所から歩いて5分ぐらいのところですね。田植えでどろだらけになっても小川があって、そこで洗い流してサンダル履いて保育所に帰る感じですね。
そこに座って、足の泥を流します。
今年は城西高校神山校から声をかけてもらって、まめのくぼ(※)で芋掘りをさせてもらいました。こちらは子どもが歩くにはちょっと遠かったので、バスに乗って行きました。

まめのくぼは、神山校が耕作放棄地を借り受け、生徒が畑として再生し、神山小麦を栽培するプロジェクトなどを行っている場所

清水:特に年長さんは、色々なところに行きますね。

阿部:小さい子を連れてはなかなか行けないけど、年長さんになると出かける機会は増えますね。

そういえば、下分保育所は、地域の季節ごとの花の植え替えもお手伝いしていますよね。上分地区の道路沿いの花壇「まほろばガーデン」では、地域の方や神山校の生徒が春・秋に植え替えをしていて、そこにもお手伝いに行っていると聞きました。
上分まほろばガーデン植え替え /かみやまch.079

photo:上分公民館

阿部:はい。地域の方から声をかけていただいて、多世代で一緒に植え替えをしています。今年は、神山校生から教えてもらってマリーゴールドをいっぱい植えました。たっぷり植えたので、上手になっていましたよ。

清水:下分保育所は、地域の色々な方から「やるから、来てよ」と招かれることが多いです。ハロウィンもクリスマスも、芋掘りも、用意してくださいました。

樽尾:一方で、広野保育所では保育所が「行ってもいいですか」とお願いすることが多いかもしれません。100%快く引き受けてくださいます。例えば、ハロウィンはこちらから近くの郵便局に話を持ちかけさせていただいたんです。そうしたら「何か用意しておきます」と言ってくださって。下分保育所とは違った形で、地域の交流があります。
広野・下分いずれも、子どもたちに「いろんな楽しいことを体験させてあげたい」という思いが保育士にありますね。

給食は季節の初物の果物がよく出ると聞きました。

樽尾:月1回の給食検討委員会で、管理栄養士と調理員、所長や主任保育士が話し合っていて「季節の果物を取り入れて欲しい」という職員からの要望が実現している形ですね。

清水:果物は保育所で初めて食べた、というのが多いかもしれません。ただ、まずまずは食べてるかなと思うんですが、どう工夫しても「食べません」という子は増えてきましたね。

阿部:最近では、城西高校神山校の生徒さんが子どもたちの野菜嫌いを克服するための課題研究として、にんじんクッキーを焼いてきてくれました。神山校へ行き、一緒に野菜のカップケーキ作りもしました。保育士不足の中、できることは限られますが、職員は頑張っています。地域にも支えてもらって、子どもたちは育っていますね。


幼児期だからこそ、少人数でゆったりと見守られて過ごす環境は、発達にもより大事になってきます。保育士不足の中でも、ゆったりと地域の中で育てられている子どもの様子が伝わってきました。

さて、次回は、実際に町内で小中学生、高校生以上のお子さんがおられる保護者の方へのインタビューです。

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